「…………う………ん?」

『あ、起きた』

うっすらと目を開けると、大きな顔に鋭い牙と角が見える。

「………?」

何回か瞬きをして起き上がると、自分を見下ろしている龍を見た。

「…………」

『大丈夫か?姉貴』

「…………」

まだボンヤリとしているのか、視点が合っていない。

『レイン、起きた?』

聞き覚えのある声が聞こえ、そちらへと顔を向ける。

『レイン!』

「………ティア?」

『ピギィ!』

とことこと寄ってきたティアは、レインにすりすりと体を寄せる。

「!ティア!無事だったんだね!」

一気に思考がクリアになると、レインはティアを抱き上げた。

「……ここは?……それに、確か私……」

背中を切られたことを思い出し、右手を伸ばす。

だが、どこを触っても痛みはない。斜めに切られた筈だったのだが。

「……どうして?」

「……お前の師匠が治したからな」

後ろから聞こえた声に、レインは振り返った。

「……アル……!傷は?それに、師匠って?!」

「順番に答えてやるから、まずはこれでも食べろ」

ポンッと放り投げられたのは、真っ赤なリンゴだった。

「……リンゴだ」

『リンゴ!』

アルはティアにもリンゴを渡すと、レインの隣に座る。

「ここは龍の谷。お前が目指していた場所。今いるここは、龍の谷の奥にある花畑だな」

「……ここが、龍の谷……」

信じられない様子で、レインは呟いた。だが、アルが嘘をつく理由はないだろうと思い直し、貰ったリンゴをかじって、話の続きを待った。

「お前の師匠からの伝言だ」

アルからレオンの話題が出るとは思わなかったので、レインは驚く。

「!どうして師匠が?」

「そのことについても、話す」

アルは、レオンが言っていたことを、レインに伝える。

「………師匠」

「だから、長老様に、お前をここに住まわす許可を貰っておいた」

「……私、ここに居ていいのかな?」