儀式の間は、仕事場からそう離れていない所にある神殿の中にあるようだった。

レインとノノンは、表に見張りがいると知り、裏口へと回る。

丁度見張りは、儀式のためにいないのだろう。すんなりと中に入ることが出来た。

儀式の間には、数人の男達がおり、全員ハサミを持っている。

檻の中には、先程見た龍の赤ん坊達が詰められていた。

「「……」」

レインとノノンは息を殺して、柱の後ろから様子を伺う。

「さぁ、竜へと堕ちるがいい」

そう言って、ノノンの父親は一匹檻から出すと、ハサミを持っている男へと差し出す。

男は差し出された龍の赤ん坊を腕に抱え、背中の翼をハサミで切り落とした。

『ピギャァァァァ!!!』

断末魔のような悲鳴が聞こえ、レインとノノンは肩を跳ねらせる。

(……そんな……)

自分が予想してしまったのと同じことが起きてる。

(……大人の竜の背中に付いていた出っぱりは、やっぱり切り落とされた痕なんだ)

人の手で、龍を竜へと堕とした。

「さぁ、他の龍もみな竜へ!」

男達は次々と龍の翼を切り落としていく。ポタポタと赤い滴が床を濡らし、悲鳴が上がる。

「さぁ、これを飲め」

ノノンの父親は、灰色の液体を龍に飲ませた。

すると、龍は苦しそうにバタバタと尻尾を叩き付け、やがて動かなくなった。

仰向けになりながらも、お腹は動いていることから、生きてはいるだろう。

(……まさか、あの水。竜にするための水なの?)

耐えきれなくなったレインは、飛び出そうと思った。

だが、その前にノノンが飛び出す。

「!ノノン!」

レインの声を無視し、ノノンは走った。

「お父さんの馬鹿ぁぁぁぁぁ!!」

ノノンは最後に残っていた一匹を抱き抱えて、父親を睨んだ。

「ノノン!何故ここにいる?!」

「酷いよ!何でこんなことしてるの?!翼切っちゃうなんて可哀想だよ!」

「……儀式を邪魔するとは」

神官だろうか?

整った衣装を身に纏い、長い杖でトンと床を叩く。

「も、申し訳ありません。私から良く言い聞かせます。神官様」

ノノンの父親は、その場で膝をつき頭を下げると、ノノンの腕を引っ張る。

「痛い。離して!!」

「さっさと神官様に謝らんか!そして、その龍を差し出せ!」

「やだ!差し出したら、この子の翼切っちゃうんでしょう?!」

ぶんぶんとノノンは首を振った。

「龍は昔からこうして育てると決まっているんだ。人と龍が共に生きるためには、龍を飼い慣らさなければならない」