「ここが私の家!お父さんと一緒に住んでるの!」

ノノンに案内された家は、レインの家と作りが似ている。

「?お母さんは?」

レインが、聞くと、ノノンは目を伏せた。

「お母さん、私が生まれた後、体を壊して死んじゃったってお父さんが言ってた」

「!……ごめんなさい」

無神経なことを聞いてしまったと、レインはノノンに頭を下げる。

すると、ノノンは笑って首を振った。

「謝らなくて良いよ!お姉さんは気になったから聞いただけ。私は答えても良いと思ったから言っただけ。もし言いたくなかったら言わないし、お姉さんもそれ以上は聞かなかったでしょう?何も悪くないよ」

ニカッと歯を見せて笑うノノンを、レインはまじまじと見た。

(……この子は、幼かった私よりも賢い)

三年前のレインよりも幼く、見た目だけなら十歳くらいだ。

それなのに、ノノンは自分より大人に見えた。

レオンは良く、レインに心の意味での大人になってほしいと言っていた。

年月を重ねて、レインもそれなりに、レオンの言っていた意味は何となく分かった。

けれども、ノノンを見て確信した。彼が求める心の大人とは、きっとノノンのような賢さや強さを持つことなのだろう。

(自分よりも幼い子から学ぶこともあるんだ。……ううん、年齢なんて関係ない)

子供も大人も、人はいつも学び続ける。

この世の中に、もう学ばなくて良いなんて限度はないとレオンは言っていた。

子供は大人から学び、大人もまた子供から学ぶ。

まだ中途半端な自分は、これからも大人と子供の両方から学んでいくのだろう。

(……だったら、負けてられないね!)

教わるだけでなく、自分からも教えられる人間になりたい。

レインは強くそう思った。

「?お姉さん?」

「よし、頑張ろう」

グッと両手を握り、何やら気合いを入れているレインに首を傾げながら、ノノンはドアを開ける。

「いつまでも立ってるのもなんだし、入って!」

「ありがとう!お邪魔します!」