「ただいま」



玄関の扉を開けると、靴の整頓をしてる母ちゃんが顔を上げた。



「お帰りなさい。遅かったわね」


「んー。美恋達とマック寄ってた」



靴を脱ぎながらそう答えると、母ちゃんが「あら!」と嬉しそうに声のトーンを上げる。



「美恋ちゃんと相変わらず仲が良いのねぇ」


「……まぁ、普通」


「お姉ちゃんとゆうくんなんかまた喧嘩してるらしいわよ。まったく、いつになったらあの子達は落ち着くのかしら……」



頬に手を当て、溜息をつく母ちゃんを横目に、“アイツらはあれが通常運転なんだよ”と頭の中で呟く。


でも言わない。


言ったら言ったで、多分話が長くなるから。



「あ。そうだ。食べてきたなら今日は夕飯はいらないわよね?」


「いや、食うし」


「食うのかい」



「まったく、どんな胃袋してるのよ」そう悪態をつく母ちゃんの言葉は聞かぬふり。



しょうがねーだろ。育ち盛りなんだから……。



そそくさと玄関を上がり、自分の部屋がある2階へ向かおうと階段に足をかける。



「もうすぐご飯できるから、着替えたらすぐ下りてきなさいよ!」


「へーい」



緩い返事をしながら、俺は2階へと続く階段を上った。