「ジロ。その傷どうしたの?」


「あー……ちょっと転んだ……」


「ぎゃはは!うける!口の端切るとか、どんな転び方したらそうなるんだよ!」


「うるせー本田!!てめーはもういっぺんふられてこい!!」


「ちょ!雑に傷ほじくり返すのやめてくれる!?」



ただ今、体育の授業の真っ最中。


隣同士のコートで男子はバスケ、女子はバレーと別れて試合をしている中、私達はコートの外で自分のチームの出番待ち。


体育館のステージの上で高峰くん本田くんと談笑しているジロに、私はステージ下からギリギリと鋭い視線を送っていた。



なーにが、転んだだ!



私の視線に気づいたのか、ジロとバチッと目が合って、私は思い切りフンッ!と顔を背ける。



「なーに?美恋、また元木と喧嘩してるの?相変わらず仲が良いよね〜」



私の隣で幸は呆れ顔。



いや、ちょっと待て。何かおかしくないか?


喧嘩してるのに仲が良いって、言葉の組み合わせ間違ってるでしょーよ。



「仲良くなんかないし!私は今ひっじょーに腹が立ってるの!」


「え〜なになに?何かあったの?」



興味津々とばかりに身を乗り出し、ニヤニヤしてる幸をじろっと睨みつけるも、幸はその緩んだ表情を引き締める様子はない。