【佐野大志side】



俺は恋に本気になんてならない。恋なんてしない。

恋なんて──大嫌いだ。


なぜか俺は物心ついた幼稚園に通っていた頃から女子にモテた。
バレンタインデーになればたくさんのチョコレートをもらったし、手紙もたくさんもらった。


誰かから好意を寄せられることについて、最初から嫌悪感があったわけじゃない。


歳を重ねるに連れて、その想いのカタチは変わっていった。
一方的に伝えられるだけだった感情は、いつしか"付き合ってほしい""恋人になりたい"という要求に変わっていった。


でも俺はいまいちその利点がわからなくて、女子たちの告白をずっと、「ごめんね」とひたすらに断り続けていた。


誰かと付き合いたいとも、恋人になりたいとも、思わなかった。


告白を断ることに、最初から罪悪感がなかったわけじゃない。気持ちを同じだけ返せないでいることに多少の申し訳なさはあった。


けれど時間が経って、俺に告白してきたやつが友だちに告白しているところを目撃したり、俺をあからさまに毛嫌いして避けるようになった女子もいて、もう、わけがわからなかった。


だからかもしれない。俺はこの世界でいちばん"好き"という恋愛感情が信じられなかった。


所詮、その程度。俺が一度「ごめん」と言っただけで諦めたり、嫌いになる程度の浅い気持ち。


いつしか俺に好意を寄せる女が苦手になっていった。