どれくらい泣き続けたのだろう?

レインの瞳から流れていた涙は渇き、呼吸も落ち着いてきた。

レインはどこか虚ろな顔で立ち上がると、とぼとぼと歩き始める。

サバイバルナイフはポシェットごと、走ってる途中で無くした。

今レインにあるのは、姉が残した横笛だけ。

(私が、もっと早く帰っていれば……姉さんは)

金色のものを持って走っていたレインは、茂みの向こうに姉の姿を見つけた。

声をかけようとしたが、姉はフード姿の怪しい人達に縄で縛られ連れてかれていき、レインは金色のものを放り出して姉達を追った。

だが、子供の足では大人の足に追い付くことは出来ず、しかも途中で転んでしまったため、レインはティアナ達を見失った。

何とか足跡をたよりに見つけた頃には、姉は張り付けにされ、クックレオも足元に縛られていた。

姉とフードの人達の会話を聞きながら、何とか姉を助ける方法はないかと考えていたのだが、そんな時間はなく、ティアナの足元に火が付けられ、レインは慌てて飛び出した。

(……姉さん………)

村の子供達は、姉を魔女と呼んだ。けれどもレインは、到底信じられなかった。

レインにとっては、ティアナはただの人間で、大事な家族でしかないのだ。

けれども、さっきの光景は間違いなく現実だ。

(もし、姉さんが魔女だったとしても、私は姉さんを嫌いになんてなれない)

正直に言ってしまえば、確かに怖いと思った。呪文のようなものを唱えた姉は、人間には見えなかった。

けれども、最後まで優しく微笑んでいた姉の顔を思い出すと、やはり姉が大好きなのだと思う。

(……家に行けば、何かあるかな?)

そう思ってから、レインは首を横に振った。

(駄目。姉さんを見捨てた村の人がいる所になんか帰りたくない)

村人達がティアナを差し出したことは、幼いレインでも分かった。

そして、恐らくレインのことも差し出したのだろう。もし戻ったら、村人達が何をするか分からない。

(……金色のやつ、取ってこようかな)

姉にあげようと思ったもの。腕に抱いてた時、何だか不思議な温かさがあった。

レインは金色のものを放り出した所へと歩く。今は何だが、温もりがほしかった。

独りぼっちだと実感するのが怖くなり、レインは歩みを進める。足はくたくたで、喉もからから。それでも、レインは歩くことを止めない。

日も沈み、暗くなった森の中に、レインの姿は消えていった。