憎い憎い憎い──その同情の言葉は、死んだ妻と息子や、オレに向けられたものじゃない。自分が優しい人間なのだと思いたいがための言葉じゃないか。

 外面だけでいい気になって、心はとうに、どこかに行ってしまっている。

 オレの家族のことなんかすっかり忘れて、みんなが笑っている。オレだけがそこにいない。

 理不尽な運命に抗えない。他人事(ひとごと)だと笑っている奴ら。自分はそうじゃないとでも言いたげだ。

 みんなが幸福を抱いて笑い合っている。オレだけがその中にいない。オレの妻と息子は、もうそんな笑顔は出来ない。オレは、そんな笑顔を見ることが出来ない。

 死の前では誰もが平等であるのに、自分だけは不運に見舞われないと思っている。そんな奴らに、不幸を与えるのだ。