ケータイ小説 野いちご

嘆きの断片

◆世界の境界線
*踏み入れた世界


 ラクベスは眼前にいる黒い影から目を離さず、バッグに手を掛ける。

 そのとき──

「おい、そこの奴! そこから離れろ!」

 思いもしない第三者の声に、二人はどういうことなのかと瞬刻、動きを止めた。

「あんただよ。目の前に悪霊がいる。日本語通じるか?」

 三十代前半と思われる男は手に数珠を持ち、どうしたものかと戸惑うラクベスに歩み寄る。

「おいおい。中に人がいたのかよ」

 パーシヴァルはそれに、まじかよと頭を抱える。結界を張ると同時に範囲の中にいる者を追い出す術を施すことも忘れていた。

 これは二度目の失態だ。

「悪霊?」

「そうだ。俺がなんとかするから、早く公園から出るんだ」

 日本語が通じると解った男は公園の外を指差し、ラクベスをせき立てる。

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