神社を出た二人は、目的もなく足を進める。ただ歩いている訳ではなく、一帯の状況や環境、地形を覚えるためでもある。

彼らの仕事に失敗は許されない。故に、そのための努力を惜しむことはない。

 とはいえ、住宅街に不釣り合いな二人に住民からいぶかしげな視線を送られてパーシヴァルはここでも居心地の悪さに苦笑いを浮かべる。

「あなたが視た影──石動 春仁(いするぎ はるひと)ですが」

「おう。何か解ったか」

「十数年ほど前に、妻と幼い息子を亡くしています」

「そりゃあ、また」

「強盗殺人だそうです」

 彼が少しのあいだ、家を離れているときにそれは起こった。

「どちらも刺殺とのことですが。四歳になる息子は腹部を激しく蹴られ、内臓が破裂していたと」

 それを聞いたパーシヴァルは目を眇め唇を引き結んだ。

「胸くそ悪い」

 そのことが石動という男を闇に引きずり込んだのだとすれば、そう簡単に終わる仕事じゃない。

「家は」

「近くです」

 二人はさっそく、彼が営む店舗兼自宅に向かった。