「晴れて良かったね」

太陽がまぶしい位に輝いている空は雲一つなくて、まるで敦也くんが外へ飛び出すことを歓迎しているようにさえ思える。

「うん、そうだね」


敦也くんの車いすを押しながら声をかけた私に、敦也くんは緊張した硬い表情を浮かべて一言だけ答えただけだった。


今日は、待ちに待ったバスケ観戦の日。

栄養部の前田さんが車両も手配してくれて、私と前田さんとそれから看護師長が敦也くんの付添いとして会場へとやってきた。

敦也くんは紺のTシャツにジーンズ、それから何かから隠れる様にキャップを深めにかぶっている。

いつもの病院で生活している時のジャージ姿とはなんとなく雰囲気が違っている。

私も前田さんも、それから師長もみんな私服だから、体育館に到着する車内もやけににぎやかだった。

もちろん敦也くん以外は、なんだけど。