『何をそんなに怖がってるの?』


あの日、敦也くんに言われた言葉は、小さな棘みたいに心の奥に刺さって、なかなか取れないでいて、困る。

だって歌うたびに、あの言葉が頭の中で何度も蘇ってくるんだもん。


はぁぁ。

今日は浮かない私の心とは正反対になるくらい晴天だった。向こうの空には入道雲。

少し涼しくなった夕暮れの屋上で数曲歌ってみたけれど、なんだか集中できなくって早めに切り上げた。


「外の世界に飛び出すことなんて怖がってるのは、敦也くんの方じゃん……」

屋上のベンチに身体を預ける様に座ると、口からポロリと零れる気持ち。

私は怖がってなんてないよ。

そんなことを自分に言い聞かせるように呟いていた。