森の見周りを終えたカレルは、手に入れた薬草を持って、ノーラの小屋に向かっていた。

途中、見慣れない集団に気付き顔をしかめる。

けれど中央の女性を目に止めると、興味を失ったように視線を逸らした。



「ノーラ、頼まれていた薬草持って来たぞ」

扉を開けカレルが声をかけると、薬の調合をしていたノーラがゆっくりと立ち上がる。

疲れたように腰を摩ると、ふと窓の外に目を向けた。

「なんだか騒がしいね……あれは誰だい? 随分と派手な格好をしているけど」

じっと様子を伺っていたノーラは、あっと声を上げ両手を合わせた。

「もしかして王弟妃殿下かね。あんなドレスを着ているのは他に居ないよ……おや、あの妃殿下、なんだかシェールに似ていないかい?」

カレルはそれには答えず、薬草の束を机に置いた。

「他に必要な物はないか?」

ノーラは未だ窓の外を眺めながら、答える。

「特には無いよ」

「しばらく来る事が出来ない。何か有るなら今言ってくれ」

「明後日にはシェールが来るし、大丈夫だよ」

「シェールも来ない。当分来れないだろう」

その言葉に、ノーラは漸くカレルに向き合った。

「シェールにはそんな事聞いていないよ」

「急用が出来たんだ」

「ふーん……だとしても、なぜそれをあんたが知っているんだい?」

「……」

答えないカレルに、ノーラはシワの刻まれた目尻を下げて言う。

「あんた達ついにくっついたのかい? いつになったら纏まるのかとじれったかったけど、良かったよ」

「……そんなんじゃない」

カレルはそっぽを向きながら、ぶっきらぼうに答える。

「照れないでいいよ。シェールはいろいろ事情がありそうだけどいい子だよ。明るいし心根が優しい。薬師の勉強も頑張っている。働き者の良い奥さんになるよ」

「あいつの長所は言われなくても分かってる」

「ならいいじゃないか。あんたもたいがい謎の多い男だけど、面倒見はいいし、冷静で賢い。シェールとお似合いだと思うけどね」