母「真田、今日も夜お母さん仕事だけど大丈夫?」



真田「いつまでも子供扱いしなくていい。…大丈夫だから」



母「そう…。…あ、これ付けていきなさい!寒いからね」



母さんは灰色のマフラーを俺の首に巻いた。



真田「行ってくる」


母に見送られながら俺の通っている原崎中学に向かって歩き出した。


真田「…ここほつれてんじゃねぇか…」


と言いつつも、母の手編みと見られるマフラーきちんと首に巻いたままだ。

……決してマザコンとかそういうやつではない。

ただ…時間もないのに毛糸の服をほどいて、編んでくれた母の気持ちを考えてのことだった。




ー…



藍「おーい、真田ぁ!」



真田「………藍咲…何のようだ」



藍「今日は2組の志水を頼むぜ。もちろん、いつもの料金払うし」



真田「…前払いだ」



藍「…はいよっ。お前のことは信頼してっからなぁ、せいぜいよろしくな」



俺は藍咲がその場からいなくなって舌打ちする。

うちは貧乏だ。…親父が内緒で借金をしていて、しかも耐えきれなくなって自殺した。その残った借金は、俺達に最悪な目で渡ってきた。

時折来る借金取りに怯える母さんと、俺には何も出来ないという無力さが、とてつもなく嫌だった。



『俺、中学辞めて働く』



そう言っても母さんが首を縦に振ることは無かった。…そのため、母さんはいつも仕事をかけもっていて昔とは比べものにならないくらいにやつれた。

当然俺もバイトはしているけど、学校に行ってその帰りにというのは借金の足しにすらならない。



ードカッー


志水「グッ…真田…てめ……」


ーバキッー




だから俺は学校で、こういうことで金をもらっていた。…誰かを殴ってくれ、協力してくれ、盗ってきてくれ。…金さえよければどんなことも受けた。

最低のクズだと罵られても、怖がられても、陰口を叩かれても、俺は全然平気だった。

少しでも母の負担を減らしたかったから。