サボンの町を出てから10日は経った頃、広大なダイトの国でもかなり北の方へと来た。ここまで来るのに最初は馬に乗っていたから楽だったが、3日乗り続けると馬が疲れで悲鳴をあげてしまった。結局そこから遥は歩いて北のサミイ国へと向かうことにした。

しかし、ここまで北に来ると風がかなり冷たくて遥はガクガクブルブルと震えている。

別に遥の着物が薄着というわけでは無い。というより着物は案外暖かいものである。遥のもう1つの服である巫女装束もかなり暖かい。そんな暖かい着物ですら寒く感じてしまう程の冷たい風なのだ。ダイト国内でこれならサミイ国は相当寒いだろう。

こんな寒い時は温泉に使って暖かい物を食べたいところである。・・・特に味噌系の食べ物。

「ダイト国の北の方では魚介類は取れないから必然的に肉を味噌で料理した物だろうか。味噌を出汁にした肉鍋、寒いところならではの味わい方があるのだろうな・・・。」

クールな表情をしているがヨダレが垂れ出る一歩手前である。

しかし、遥はいくら歩いても次の町に辿り着かない。

道を間違えたか?いや、そんなはずはないだろう。

恐らく強風のせいで歩く早さが遅くなっており、ちょくちょく休憩しながら歩いているから予定より大幅に遅れているのだ。

そろそろ夕暮れの時、残念だが見知らぬ土地の暗い道を歩くのは危ない。ただでさえ、ダイト国の夜は亡霊系のモンスターが出るから余計危ない。

「ああ〜・・今日は野宿になるか。こんな寒いところで野宿は予想外だな。」

少し自分に対して苛立ちという感情が沸き起こってくる。

しかし、遥が周りを見渡すと小さなボロ小屋が目にはいる。

恐らく、運悪く野宿をしてしまう展開になった旅人の為に作ってある小屋だろう。だとしたら、小屋の中には最低限の食材と近くに温泉に似たようなのがあるはずだ。

「助かった・・・。最悪でも野宿は避けたかったところだ。」

感謝の気持ちを心で述べて遥はボロ小屋へと足早と歩く。