「あたしも、行くね」


和馬が出て行ってすぐ梨央がそう言って立ち上がった。


「梨央、本当に?」


あたしは慌てて立ち上がり、梨央の手を掴んだ。


真冬だというのに、梨央の手はジットリと汗ばんでいる。


「うん。1人分のアラーム音ならきっとどうにかなる。でもみんなで集まって大音量になったら、きっと逃げることはできない」


梨央もあたしと同じ考え方なのだ。


スマホの薄明りの中で見えた梨央の顔には涙の跡が残っている。


しかし、今はもう泣いてはいなかった。


決意を固めた表情をしている。


「絶対に、無事でいてね」


あたしがそう言うと、梨央はほほ笑んだ。


「もちろん。若菜もね」


梨央はそう言うと、家庭科室を出て行ったのだった。