ジリジリと太陽が肌を焦がす。
季節は夏。
風はなく、グラウンドの砂はひどく乾いている。
額に滲む汗。手のひらにも、汗。
緊張の、一瞬、一瞬が、積み重なって連なる。
青春の、ほろ苦さ。
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小学五年生の夏休み最終日。私は母に無理やり連れられて双子の弟、蒼(あおい)が所属している野球チームが行う試合を観戦しに来た。
朝から行きたくないと駄々をこねる私を見かねて母が半ば呆れ気味に買ったばかりの白いワンピースをおろしてくれた。鏡の前でくるくる回って全身を確認し、まるでお姫様気分だ、なんてすっかり浮かれてルンルン気分でついて来てしまった。
車で片道一時間ほどかかるグラウンド。保護者たちは、選手たちがいるベンチの後ろに自分たちで簡易テントを立てて、キャンプで使用するような椅子を持参して座っている。おば様たちはみんな、扇子や団扇で顔を仰ぎながら世間話に花を咲かせている。
そんな試合前のひと時。私はくちびるを尖らせて足をブラブラさせながら過ぎ去る一秒の遅さにくたびれていた。
「…っしゃああす!」
そして。
両チームがグラウンドの中心までダッシュして整列し、雄叫びに似た挨拶が交わされた。
開会式とウォーミングアップとで、かなり時間が経っていたが、とうとう試合が始まったらしい。
まずはじめに蒼たちのチームが守備についた。蒼のポジションは確かショートというところらしい。蒼が立っている姿を見て、ショートというポジションがどこなのかをようやく知る。
ちょうど半年前から蒼は野球を始めた。蒼と家で野球の話はするけれど、正直なんのこっちゃわからない。いつも楽しげに話をされるけれど、さほど興味もわかなかった。白けた私の感情は一方的に無視されて、蒼は気の進むままに話を続けるのがお決まりだ。
打って守って、表と裏を繰り返して点を取り合うルールは理解できても詳細はとても曖昧。それでも入部半年でレギュラーに抜擢された蒼の凄さはわかっているつもり。
「あ……」
ふと、グラウンドのど真ん中に立つひとりの男の子に目がいった。
同じクラスの、鈴木彼方(すずきかなた)だ。
彼方が蒼のことを誘ったから、蒼は野球を始めた。
彼方はピッチャーらしい。グラウンドの中心に立ち、軽くジャンプを繰り返している。野球の知識がなくてもピッチャーの立ち位置や役割ぐらいは知っている。