暗黒の闇の中、少女は一人でさまよっている。ふと遠く彼方、地平線の方から光が差してきた。新しい日。闇の時代の終わりを告げられた世界は喜びに満ち、草木は芽吹き、色とりどりの花が美しく咲き乱れる。蝶や鳥が少女の周りでヒラヒラと舞い踊る。すっと一筋の涙が少女の頬を伝った。零れ落ちた涙が大地に触れると、その大地は凹み、大きなくぼみを作り、溢れた水で池ができた。やがてその池は湖となり、少しずつ流れ出した水が川、滝、海を作っていく。木は水を与えられ潤いに満ち、輝かんばかりの様々な果実を惜しげも無く実らせた。なんて美しい景色だろう。それでも少女は暗い虚ろな瞳でその景色を見つめるだけ。ふと少女が目を伏せる。目はしっかりと閉ざされているのに、涙だけがとめどなく溢れている。その涙は遥か彼方の地平線にある陽の光に照らされ、黄金色に輝いていた。少女のまつげを濡らし始めたその黄金の雫は、少女に纏付き、美しいベールとなった。黄金のベールを纏ったその姿はまるで女神のようで。静かに彼女の目が開かれた。その目はもう闇に染まってはいなかった。ふと少女が口を開く。聞こえてきた言葉は、ーこれで良かったのかーー。少女にしてはとても大人びた声だ。ただ分かることは、少女は自分の過去を悔やんでいるということだけ。少女はその心の中で一体どれほどの苦しみを抱えているのだろう。一度でも闇の色に染まってしまったその瞳は、一体何を写してきたのだろう。それは、少女以外は誰も知らない。いったいこの少女に何があったのか。