ケータイ小説 野いちご

あなたの中の愛しい人

第7章 コイビト



 二十五日の夕方頃、永井さんから連絡があった。

 夜に会うのはいいが、なにをするのか全く考えられずノープランだった。考えてしまうのは全て恋人同士のプランだ。プレゼントとケーキを渡すだけで、あとはもうなるようにしかならないし、永井さんに任せてしまおう、と思っていた。

「今日さ、ご飯食べに行こうか」

「でも、クリスマスだとどこも予約でいっぱいじゃないですか?」

 クリスマスの夜なのだ。きっとどこもかしこもカップルだらけだ。

「いいところを知ってるんだ。今日、店まで来てくれる?」

 永井さんは中華料理屋を辞めたあと、掛け持ちしていた仕事も辞め、今は友達が開いたレストランで働いている。話は何度か聞いていたが、実際に行くのははじめてだった。

「じゃあ、店まで行きますね」

「うん、待ってるよ」

「じゃあ、また後で」

 電話を切り、携帯をポケットにしまった。左手に持ったままの本を見る。

 これに決めた。

 プレゼントはいくつか候補をあげて、頭の中でずっとどれがいいか吟味していた。タオル、マフラー、手袋、本。マフラーや手袋は好みがわかれるとわかっていても、永井さんがつけたら絶対に似合うものを見つけてしまった。私の好みで、それをつけた永井さんを想像するだけでドキドキしていた。しかし、贈る勇気はなかった。タオルは一番無難だろうと思って候補にあげていたが、男の人がタオルを使うのをあまり見たことがない。考えているうちに時はすぎ、当日になってしまった。

 今朝、永井さんと初めて会話を交わしたとき、ひょんなことからいつか行きたい海外の話になったことを思い出した。永井さんはバリだと答えた。

「なんでバリなんですか?」

「うーん、なんだろう。ゆったりした時間が流れてそうだからかな。海もきれいだし、建物もちょっとエキゾチックで好きなんだ。寺とか」

「お寺が好きなんですか?」

「変態っていいたいの? 俺は変態だけどね」

 たった今、そんなやり取りをしたような気分で、少し顔をほころばせながらレジに本を出した。バリの写真集だった。

「あの、ラッピングしてもらえますか?」

 一二六〇円を出したとき、店員に言った。

「ラッピング用紙とおリボンの色なんですが、こちらからお選びください」

 小さなボードに見本のラッピング用紙とリボンがくっついていた。クリスマスだからか、小さいサンタとトナカイがプリントされたラッピング用紙が三種類もあった。あとは赤、青の無地の紙と、緑、黄、ピンクのリボンがあった。クリスマス柄のはちょっと幼稚っぽく見えたので、赤の紙に緑のリボンを選んだ。

 店を出るとき、ラストクリスマスが流れていた。思わず口ずさみそうになったが、我慢して心の中で歌いながら踊っていた。




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