ケータイ小説 野いちご

あなたの中の愛しい人

第8章 オチル



 クリスマスだからといって、多少やりすぎたかもしれない。でも、私は今こうして永井さんの家のベッドの上にいる。何度もキスをして、身も心も本当に溶けてしまったみたいで、何も考えられなかった。ぼんやりとした頭で、でもキスされるたび、永井さんの指に触れられるたび、全身ぞくぞくした。どうしてしまったのだろう。

 永井さんがシャツを脱いだ。私のセーターの中に手を入れて、ブラのホックを外す。

「嫌ならいいよ、無理しなくても」

 突然唇を離し、そう言った。

 電気一つついていない暗闇の中に、永井さんの表情は見えない。

 私は永井さんを欲しがっている。貪欲になっていた。恥ずかしいけれど、止められないとわかっていた。

「無理してないです」

 そう言うと、再びキスが降ってきた。上唇と下唇をつるつるした舌が細かく動いていた。

「バンザイして」

 言われるままに腕を上げる。セーターを脱がされ、取れていたブラがするりと腕に落ちる。

 永井さんの手がそっと私を包み込んだ。あたたかくて、気持ちがいい。

 身体中が熱くなっていた。裸になった胸を手で隠し、恥ずかしくなって少し笑った。

「くすぐったい?」

「大丈夫です。ちょっと恥ずかしいけど」

 そっと私の両手を取って、指を交差させた。

 この感覚を、絶対に忘れない。そう思った。小さな子どもをあやすように髪をなでる手も、唇の感触も、永井さんの髪の匂いも、肌の感触も、肌と肌が触れ合う瞬間も。そして、キスされたときに起こるふわふわとしためまいも。

「全部俺に任せて」

 うなずき、身体を全部永井さんに預けた。

「名前を呼んで」

 永井さんが言った。

「永井さん、永井さん、永井さん」

 何度も呼んだ。そして手を伸ばした。

「そうじゃなくて、下の名前」

 ああ、そうか、と名前を呼ぶ。しかし、なんと呼べばいいのか。

「大貴? ヒロ? ヒロ……君?」

 私は永井さんの名前を呼んで、さらに恥ずかしくなった。でも、永井さんは優しく身体を撫でる。

「好きだよ、千晴ちゃん」

 そのたび返ってくる言葉に安心して目を閉じた。

 夜は静かに空けていった。


< 10/ 27 >