そうして、運動会後は比較的学内でも穏やかに過ごせるようになった。

しかも、里田くんや谷村くんの態度が相変わらずでもである。
あまりの穏やかさに、梅雨が明けて学期末テストも終わり夏休みが迫る頃になってこの事態の原因を知った。

それは何気なく呟いた私の言葉に返ってきた春子の返事によってだった。

「運動会からこっち、里田くんと谷村くんが相変わらずでもかなり周囲が穏やかで助かるけど、ちょっとへんじゃないかな?」

そんなふうに呟く私に実にあっさりといった春子。

「それは、体育祭で会長と先輩と仲良く話してる咲を見たこの学園のある種の層が理解したからよ。あの問題起こした後輩もお嬢だし……」

その言葉に、ん?と思っていると春子は簡単に説明してくれた。

「この有川学園が元々は富裕層の子息令嬢のための学び舎なのは知ってるでしょう?」

「うん、でもこの時代には古いって先代から一般の生徒も受け入れてるのよね」

「そうそう。でも前身がその受け皿であった以上今でも過半数はそういう家庭の子なのよ。その子達は咲が会長や綾小路先輩と仲が良いのを見て思ったわけ」

「何を?」

「咲に何かをしでかして、会長や綾小路先輩の怒りを買いたくないってこと」

その言葉に少し驚く、私はそんなことあまり気にしてなかったから。
先輩は先輩であり、そこにあれこれ思惑なんてなくて純粋に趣味仲間で意気投合いているから。

「しかも里田くんも里田不動産の次男坊だし、谷村くんもデザイナーのSYU TANIMURAの息子ですでにそこで小物デザインとかも自分でしてるデザイナーの卵なの」