同じ路線だが向かう先は逆方向のため、改札で振り切って全速力で階段をのぼりちょうどいた電車に飛び乗った。

「なんで、インドア派の私がこんなに走るハメに……」

軽くゼイゼイ息を乱しつつ、なんとか落ち着いてきた。

私のうちは学校の最寄り駅から二つ先の駅から徒歩三分のマンション。
雨でも濡れずに帰れるのがいい所。

そんな近距離だから、普段は送ってもらったり迎えに来てもらうことなど無いのだけれど。
背に腹は変えられぬ……。

幸いな事に、兄妹仲は良好。
と言うより、年の離れた妹に激甘な兄の悟は明日は休みだ。

これはチャンスである!
なにしろ、兄も残念ながら彼女に振られたばかりのフリー!
暇人なのである。
これは、使わないテはない。

電車で一人、怪しくほくそ笑みつつ私は自宅へと帰る。

まずは、懐柔するための品を準備すべく私は自宅下のスーパーに寄っていくことにした。

筋肉ムキムキな警備員の兄なのだが、彼の好物は甘い物。
特に私の作るお菓子は大好物。
兄になにかをねだる時はお菓子で釣るべしが私の鉄則になっている。

今日は兄の好物、ココアのシフォンケーキにしよう!

よくお菓子は作るので、買うのはココアとバターを買い足すくらいだと、台所と冷蔵庫の中身を思い出しつつ買って帰宅。

ルンルンと弾んだ気持ちでお菓子を作った。