ソルはキルバルを待つ間、気が気ではなかった。

朝一で謝ろうと思って息巻いてキルバルの部屋へ向かったが、当の本人は留守で、それでも自分の部屋に戻る気にもなれず、ステーシアの助言を信じて外殿の東屋でずっと時を潰していた。


「ロメエル様の所に行かれているなら、キルバル様は必ずこの東屋に足を運ぶ筈ですから大丈夫ですよ」


「.......うん」


ソルは慣れない衣装にソワソワしながら、東屋の椅子に腰掛けた。

少しでも動くと露出の多い衣装は、隙間から肌が出てしまう。

大人しく座っているに越したことはない。


(うぅ.......キルバル様が来たらなんて言えばいいの.......?緊張でなんか少しお腹が痛くなって来た.......)


「ステーシア、お前は先に部屋へ戻れ」


突然、背後から声を掛けられて、ビクッと肩が飛び跳ねた。


(来た!!)


「はい。それではお先に失礼致します。」


ステーシアは恭しく二人に礼を取ると、サッと木々の間に消えて行った。


(ステーシアには居て欲しかったのに!二人きりなんて心細すぎるよ.......)


キルバルはステーシアの姿が消えるのを待って、ソルの隣に腰を下ろした。


「それで?俺に何か用か?」


「はっはいっ!!」


ソルは意を決して、勢い良くキルバルの前に跪いた。

後先考えず、思い切り膝を着いたので、石造りの地面にソルの膝が〝ゴッ〟っと音を立てた。


「殿下に対し、無礼の数々、どうかお許し下さいっ!!私はその手の事には一つも精通しておらず、御手を煩わせしまいました.......それに、酒に呑まれたといえ、ギルドラ(王族)のお身体に私の様な者が不敬を働くなど、命を奪われても文句は言えませんっ!!.......でっですが、私の日夜続けて来た解読の功に免じて、何卒今回だけは御容赦下さいっ!!」