宮殿の大広間。


思い思いに豪華に着飾ったギルドラやデルガ、他国の豪商などが大勢集まっていた。

楽士や踊り子達も次から次へと曲を繋ぎ、豪華な宮殿の料理が更に宴に華を添える。

その中でも広間を見渡せる煌びやかな特等席に、キルバルは腰を下ろしていた。

王族だけが使う事を許されているこの場所は、広間のどの場所より人が集まり、賑わっていた。

ところが当のキルバルは、毎日の様に繰り返される宴に正直うんざりしていた。

大酒を呑んで酔っ払い、気が大きくなる奴。

ここぞとばかりに、自分の商品を広げて売り込む商人達。

口を開けば嘘ばかりの、ご機嫌取りのデルガの群れ。


「はぁ~...........疲れた..........」


次々と注がれる酒を、ただ暇を潰す為だけに口に運んでいると、何やら入り口の方が騒がしい事に気がついた。

どうやら男達が騒いでいるようだ。


「アルツァ、何かあったのか?」


「おおよそ、どこぞの有名な歌姫でも来たのでしょう」


よく見ると遠くの方からベールを着けた女がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。


「今更、珍しくも何ともない」


全く興味は惹かれなかったが、騒ぎ立てる男達に、ついつい視線が持って行かれていた。

男達は、そのベールの女が通り過ぎる度に、口々に何か言い、何人かは後を追って来る為、ちょっとした行列の様を呈していた。


「キルバル様、果物はいかがですか?」


「いらぬ……アルツァ、そういえばソルはまだか?私の近くに居ても怪しまれない様に、さっさと周りに顔を覚えさせたい。終わる頃に来ても何の意味もないぞ?」


「はい、申し訳ありません。もうすぐステーシアが連れて来るはずなのですが…」


「早くしろ!もう、帰りたい」


細かい金の装飾が施された杯を気だるそうに持ちながら、ふと視線を前に送ると、先程のベールをした女がいつの間にかキルバルの前に来て止まっていた。