目が覚めると、そこには無機質な天井が広がっていた。
 ゆっくりと身体を起こすと、お腹の辺りに鈍痛が駆け巡った。あまりの痛みに思わず顔を歪ませる。
 頭に霧がかかったように思考が鈍い。見える景色も不明瞭で、目を細ながら周囲を見渡していると、足下でもぞもぞと何かが動いた。
 むくりと起き上がったそれはシルエットから女性だと判断できた。
 視界が次第に明瞭になってくると、目の前の女性と目が合った。
「……な、んで」
 発した声が掠れる。目の前の光景が信じられず、夢ではないかと自分の頬をつねってみる。つねった頬は熱を持ち、じんじんと痛んだ。
 今、自分が見ている景色が現実であると理解すると、急に目頭が熱くなり、頬に涙がすっと伝った。ポロポロと一度流れ出た涙は決壊したダムから溢れ出る水のように止まらない。鮮明になったばかりの視界が再び歪む。
「おはよう、亮介」
 桜ノ宮花はそう言うとにこりと笑った。