――私語厳禁。
それは、どこの図書館にだってある
誰もが把握しているルールだ。
もちろん、わたしだって重々承知している。
……それを忌まわしいなんて思ったことなかった。
なのにわたしは
彼に出会い、彼を見かけるたびに
そんな決まりなくなればいいのにと思ってしまうんだ。
学校は知ってる。
このあたりで学ランってあの高校しかないから。
名前は……、
聞けば教えてくれるかもしれない。
けれど、繰り返すが、図書館は私語厳禁だ。
それに本を読んだり勉強をしている相手に話しかけるなんて、いいことでもないし。
……タイミングなさすぎ!!
元々図書館通いは、しなかったクセに。
週に2回会えるかどうかの彼に会いたくて、毎日のように足を運んでいる。
たぶんこれは――、恋なんだろう。
『たぶん』というのは。
恥ずかしながら、初恋というものを経験していないから。
彼に抱く感情がいまいちなんなのか、わからない。
一日に何回も彼を思い出してしまう。
会えるとめちゃくちゃ嬉しい。
彼のことならなんだって知りたい。
――なんて考えるあたり、大好きには違いなくて。
きっと、これは、恋なのだ。