ケータイ小説 野いちご

高桐先生はビターが嫌い。

黒幕の心理。


目の前のプリントが、またえげつない言葉達で埋め尽くされている。

いったい何回これを繰り返したら気がすむんだろうか。



「…うざ」



今は、昼休み中の教室。

トイレに行って教室に戻ってきたら、さっきの物理で貰った宿題のプリントが、早速いつの間にか落書きされていて。

「死ね」や「ウザイ」「消えろ」等、もう見飽きた言葉達が、黒の太いマジックで書かれている。

…これ、どうやって宿題しろっていうの。

明日提出しなきゃいけないのに。

あたしはそう思うと、ため息を吐いて、ふいに市川に目を遣る。

これの黒幕の市川は、教卓付近で仲間達と一緒にあたしの様子を見ていて。

あたしがプリントの落書きに気づいたことがそんなに可笑しいのか、市川以外は皆こっちを見て笑ってるし。

だけど市川は市川で、不満そうな顔であたしを睨んでいる…。


あたしはそんな市川から目を逸らすと、プリントを机の中に仕舞って職員室に向かった。

……こういう先生に提出するようなものには落書きなんかしないでほしい。


…………


コンコン、とノックをして職員室に入ると、中はほんのりコーヒーの香りが漂っていた。

その微かな香りに包まれながら、あたしは「失礼します」と一言断って、早速物理担当の先生を目で探す。

プリントはもうダメにされたから、出来れば新しいプリントをコピーしてほしい。

そう思いながら探すと、物理の先生である菅谷先生は、何やら高桐先生と話している最中だった。

……高桐先生も横にいるのか。

あたしはそう思いながら、なんとなく気まずい気持ちで菅谷先生に近づく。

二人は仕事中ではなく、見る限りではただ雑談をしているだけのようで。



「…菅谷先生」



と、先生の傍に来るなりあたしがそう呼ぶと、先生は「おお、どした?」とあたしの方を振り向いた。

菅谷先生は、30代の男の先生だ。

特別厳しい先生とかでもない。

あたしが先生を呼ぶと、必然的に、隣にいる高桐先生にもあたしの存在に気づかれてしまう。

あたしはなんとなく高桐先生を気にしながら、菅谷先生に言った。

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