「ごめんな、咲桜」
 

夜半になる直前に、在義父さんは帰ってきた。


疲れた顔をしていて、開口一番に謝られた。


私は、あははと笑って答える。


「マナさんに仕掛けられたらどうしもないってことくらいわかるよ」


「それは……そうなんだが……」

 
在義父さんは口ごもりながら背後を振り返った。


「流夜くん」
 

呼ばれて顔を見せたのは、すまなそうな顔をした先生だった。


「先生」


「遅くまで手伝ってもらったから、夕飯を食べていってもらおうと思って連れてきた」


「ああ、そういう。どうぞ。すぐにあっためなおすから」
 

私は準備のためにと、先にリビングに入る。


「あ、いや華取――」


「うん? なんですか?」
 

浮かない顔をしている先生だったけど、在義父さんが押し切って中へ入れた。
 

ダイニングテーブルにはラップのかけられた夕飯がセッティング済みで、在義父さんはいつものように席につく。


先生は在義父さんに勧められた向かいの椅子に座るけど、落ち着きなさそうにしている。