それからまた1時間ほど経過した時、玄関が開いた。


プランターの花や行列を作る蟻などを見ていた僕たちは、その音にハッと顔を上げた。


立っていたのは若竹さん1人だ。


「終りましたか?」


僕は静かな口調でそう訊ねた。


若竹さんは1つ頷き返してくれたけれど、その表情は暗い。


「そうですか……」


あまりいい結果にならなかったのかもしれない。


けれど、僕の仕事はこれで終わりだ。


これ以上なにかを手伝うことはできない。


「どんなお話をされたんですか?」


潔く帰ろうと思っていたところに、柚木さんが一歩前へ出てそう言っていた。