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後悔していることは、いくつもある。
きみがいるから。きみさえいなければ。
そう何回思っただろう。
――『大好き』
言われれば言われるほど、自分の汚さが濃く見える気がしていた。
ザアアと降りしきる雨音は、まるで私を責めているみたい。やっと部屋干ししていた洗濯物が乾いて、私はお父さんの靴下を小さく畳む。
じめじめとした湿気で曇る家にいつも響いていた声。
『和香ちゃん』
今は灰色の空の彼方へと消えてしまった。
私と美憂は、今から16年前の夕方に産声を上げた。
先に元気よく出てきたのは美憂。続くようにして出てきたのが私。名前はすでに決っていたと聞いた。
まだ二十代だった両親は一気にふたりの親になり、喜びよりももしかしたら不安のほうが大きかったかもしれない。
けれど、大切に育てようと生まれてくる日を心待ちにしていたに違いない。
『美憂ちゃんに心臓の病気があります。病名は先天性心疾患です』
そう医者から告げられた時は頭が真っ白になったと、お父さんがお酒の力を借りてぽろりと溢したのは、最近のことだ。
私と美憂は同じ期間お腹の中にいて、同じように形作られたはずなのに。病気を抱えて生まれてきたのは美憂だけだった。