沖田さんが先に屯所の門をくぐり、私はその後で足がすくんだ。




「文?大丈夫...?」




「私.....勝手に抜け出しちゃったのに...戻っていいんですかね、」




「おいで」




「は、はい.......」




静かに前を歩く沖田さんにならって私も忍び足で進んだ。



「何してるんですか」(小声)




「いいから。気づかれないように」(小声)






なにか違和感があった。



いつもなら元気な声が聞こえるはずの道場からは、気の抜けたような声しか聞こえない。



いつもならうるさいくらいに響くみんなの声も聞こえない。



土方さんの部屋をこっそり覗くと、彼の目の下に、くまのようなものがあった。




寝てないのかな...。




縁側では斎藤さんがぼーっと猫を撫で、広間では永倉さん、平助、原田さんが特に何をしているわけでもなく、横たわったり、柱に寄りかかったりしていた。