次の日、夏休みだけどとりあえず朝9時から学校へ向かってみた。
念のため、制服でね。

「うわ、本当にいる」

まっすぐ屋上へ来ると、まだ9時半だというのに先輩は昨日と同じ場所に座っていた。


「うわってなんなの。
真希ちゃんもこっち座りなよ~」

「あー、はい」


呼ばれて先輩のとなりに座る、けど
このくそ暑い中、先輩はとっても涼しげな見た目だ。

同じ制服を着てるというのに、私はこんなに暑いのに。


「……先輩、今日もここで自殺する人を止めるんですか?」

「うん、そうだよ」

「なんでそんなことしてるんですか」

「だって死んじゃったら悲しいでしょ?」

「でも先輩には関係ないじゃないですか。
相手も先輩のこと知らないだろうし、先輩も知らない人じゃないですか
私にもそうだったけど」

「でも、どんな人でも悲しむ人はいるよ。
真希ちゃんにもね」

「…私はどうですかね」

「俺が悲しむよ」

「……え?」

「真希ちゃんが死んだら俺が悲しむ。
はい、これで真希ちゃんはもう死ねないね」

「だから死ぬ気なんてないってば」

「じゃあもっと生きなよ」

「え?」

「頑張って生きなよ。
生きてんだからさ」


頑張って生きる、か。
でも結構頑張ってるよ、私。

頑張って耐えてるよ。


「ねぇ、人ってなんで生きてると思う?」

「生きてるからですかね」

「だからその理由聞いてんだって」

「……さぁ。なんででしょうね
っていうか、みんな生きてる理由とかわかんないんじゃないんですか?
なんのために生きてるとかさ」

「そう?でも俺はみんな目的は一緒だと思うけどな」

「じゃあ先輩はなんのために生きてるんですか?」

「幸せになるため」

「……え?」

「俺たち全員、もちろん真希ちゃんも
俺らは幸せになるため生まれてきて
幸せになれと望まれてここまで育ってきた。

だから俺たちは幸せにならなきゃいけないんだよ

幸せになる前に死んだら、神様にも怒られるよ」


いつもさっぱりした顔で、涼しそうに話す先輩の表情が
なんかいつもより熱くなった。なんていうか、瞳の奥がなんか揺らいでるような、そんな感じ……


「ね、だから真希ちゃんも幸せになんなきゃね」

「……はぁ」


そう私に向けられた時にはいつも通り、涼しい顔をしていたけど