キーンコーンカーンコーン……



「あっ……」


チャイムの音が聞こえ、私は目を開けた。


時計を見ると、その針は9:40を示している。


どうやら、1時間目を寝過ごしてしまったらしい。


(早く、戻らないと…)


私はすぐさま起き上がり、ベッドから抜け出した。


毛布をたたみ、綺麗に片付ける。


1時間が経ったというのに保健の先生の姿は無く、それと同時に生徒の姿も無い。


ドア越しにガヤガヤと聞こえる生徒達とは、別世界に居るようだ。


鏡を見ながら髪の毛を手ぐしで整え、髪型を整えた私はそっと廊下に出た。


もう目の腫れと充血は、治まっていた。



4階の自分の教室に戻る間、私はずっと夢の事を考えていた。


数年前の記憶が夢と重なり、余計はっきりと思い出す事が出来る。


(あの頃は、演技をする事も少しは楽しんでいたのに…)


いつから、嫌気が差し始めたのだろう。


ママの笑顔を見る為なら、私は自分が壊れてもいいと誓ったはずなのに。


(ママより自分を大切にしようだなんて…馬鹿げてる)


数年もの間、私は兄の演技をやり通しているのだ。


もう、私はとっくに壊れているに決まっているのに。


実際、中1のあの日を境にして私は花恋にきちんと相談をしていない。


私が演技を楽しんでいた事もあったけれど、そこから全てを諦め始めていたのかもしれない。