私と五十嵐の間に小さな亀裂が入ったあの日から、1週間程が経った。


6月の上旬。



私達は、お互いとはほぼ話さないまま1日を過ごす事が多くなった。


いや、五十嵐は私とコミュニケーションを取ろうと、積極的に私に話しかけてくれていた。


「安藤、おはよう!」


そう言ってくれたり、


「安藤、まだ怒ってる…?」


時には、心配そうな表情でそう尋ねてきたり。


けれど、私は、


「……大丈夫だから」


「……放っておいて」


そんな、つっけんどんな態度しか取れなかった。


まだ、あの時のリアルな恐怖が拭い取れなくて、怖かった。



そんな中、席替えが実施された。


もちろん、五十嵐と私は席が離れた。


私は今の席とほとんど変わらないけれど、五十嵐は窓側の1番後ろの席に移動しざるを得なくて。


どうやら、五十嵐は隣に座る女子には自分の視力の事を話していないようで。


私が授業中に後ろを振り向くと、彼は大体誰かに助けを求める様な目をしていた。


席が1番後ろという事も重なり、余計に字が見えないのだろう。


けれど、誰も五十嵐を助けようとしなくて。


もちろん、私でさえも。


(五十嵐、大丈夫かな…?)


そう思っても、結局はまた何か言われるのが怖くて、尻込みしてしまう。