ケータイ小説 野いちご

宝刀~平和の英雄たち~

1、はじめの一歩

俺が警視庁に配属されてから早5年が経った。所轄で経験を積み、今年ようやく念願の捜査一課に異動になった。
「よし!頑張ろう」
そう意気込んで俺は初日を迎えた。いざドアの前に立つと、緊張で手が震えた。俺は、震える手をなんとか押さえてドアノブを握った。その時──
「痛って!」
俺の手に電流が走ったような痛みが走った。静電気だ。少し焦りながらも、もう一度ドアを開けようとした時、ドアノブが消えた。否、内側から開けられたのだ。
「おっと失礼。どうぞ」
ドアの向こう側から現れた男性は、優雅な微笑みを残して颯爽と去っていった。開け放たれたドアの向こうから、たくさんの視線が俺を射抜いていた。俺は意を決してドアをくぐった。
「初めまして!今日からここでお世話になります、一ノ瀬閑(いちのせしずか)です!」
俺は、来る前にずっと頭の中で繰り返していた自己紹介をスラスラ言えた自分に驚きつつ、頭を下げた。
「ああ、君が一ノ瀬くん。待ってたよ」
奥の席の人が立ち上がって俺の方へ来た。
「俺は小宮山魁人(こみやまかいと)。課長だ。よろしく」
「はい!よろしくお願いします!」
小宮山課長は手を差し出した。握手を求められているのだろう。俺も手を出して課長の手を握ろうとしたとき、手に鋭い痛みが走った。この感覚は覚えがある。静電気第二弾だ。
「すみません!俺さっきもそこのドアで静電気でバチってなって…。俺、帯電してるんですかね」
面白半分で言ったら、課の中がしんとしてしまった。俺はなにか変なことを言ってしまったのだろうか。
「あの……」
沈黙に耐えられなくなった俺は、恐る恐る声を出した。そのとき、課長がつかつかと俺の方へ歩いてきた。それも怖い顔で。俺は、殴られるのかと思い、ぎゅっと目をつぶった。しかし、課長の気配は俺の横を通り過ぎ、ドアがバタンと閉まる音がした。俺が振り向くと、ドアの方を向いて立っている課長がいた。
「雷…」
課長が何か呟いた。だが、声が小さすぎて俺には聞こえなかった。
「あの、なんて……」
俺が口を開くと、課長がバッと振り返った。
「え!?」
課長は涙を流していた。課長は俺の肩を掴んで、叫んだ。
「俺も雷がよかった!」
俺には課長が何を言っているのか理解出来なかった。漫画じゃないけど、目が点になった。俺は説明を求めてその場にいた他の課員を見た。
「ボスはたまに唐突だからな。俺が説明しよう」
俺より10cmくらい目線が低い男性が課長を引き剥がしながら言った。
「この課は警察の業務の他に、胡梢(こしょう)という国民の生活をおびやかす、所謂モンスターみたいなのがいるんだが、それの撃退の任務があるんだ」
「なるほど……。って納得出来ませんよ!」
納得しかけたが、思わずノリツッコミみたいなことをしてしまった。
「まだ話は終わってない。最後まで聞け。それで、その胡梢を倒すために捜査一課員は専用の武器を持っているんだ」
そう言って男性は何もない空間から日本刀のような武器を取り出した。
「これは俺の愛刀、湘國(しょうこく)だ。炎を纏っている」
男性は刀を抜いて見せた。すると、刀身を炎が包んでいた。まるで刀が燃えているようだった。男性は納刀すると、話を続けた。
「俺の属性は炎だ。属性によってどの力が刀に宿るかが決まる。お前の属性は雷だろう。ボスは水属性だが、雷属性にずっと憧れていたらしい」
「あのー、二つほど質問してもいいですか?」
「なんだ」
「まず、なんで俺の属性わかったんすか?」
「静電気の頻発だ。で、もう一つは?」
「あの、お名前は?」
俺の質問に男性は目をぱちくりさせた。
「言ってなかったか。俺は来栖。来栖東護(くるすとうご)」
「来栖さん… 」
「やめろ気色悪い。東護でいい」
初対面の人に気色悪いと言われたのは心外だが、どうやら俺はこの課で大変な仕事を二つもやるらしい。俺は、改めて頑張ろうと意気込んだ。

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