電車を降りて改札を出て踏み切りを渡り、線路沿いの歩道をまっすぐ歩けば、約十分で学校へとたどり着く。


歩道は狭くて二人並んで歩くといっぱいいっぱいだ。

通学時間帯ということもあり、同じ制服を着たたくさんの生徒の中にまぎれる私たち。

その中には新入生と思われる人の姿も多くあって、「楽しみだねー!」なんて言いながら、これから始まる新生活にワクワクしている様子がうかがえる。

中学の時とはちがう通学路。駅から離れていくにつれて、辺りは閑散としてくる。

学校の周りは住宅街で、線路がある以外は静かでひっそりとしていた。

校門の前にはでかでかと『入学式』というついたてがあって、大きな桜の木が一本そびえ立っている。

そこには満開の桜が咲いていて、風が吹くたびにハラハラとピンク色の花びらが辺りに舞った。

快晴の空とピンク色の花びらがとても綺麗で、思わず頬がゆるんだ。


「やっぱり私、桜の花って好きだなぁ」


桃っていう名前は、春生まれだからという理由でお父さんが名付けた。

お父さんの中の春のイメージはピンクで、柔らかくて優しい春の陽だまりのような暖かい子になるようにという願いが込められているらしい。


柔らかく優しい、春の陽だまり。

イメージとはずいぶんかけ離れているけれど、今の自分も私は嫌いじゃない。