ケータイ小説 野いちご

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早く気づけよ、好きだって。

Lovers*4
大切な人


その日の夜、マンションの部屋を出たところでいつ帰ってくるかわからない蓮を待ちながら空を見上げていた。

秋めいた風が吹いて、夜はとても肌寒い。ザワザワと木の葉が擦れる音がするのと、鈴虫がどこかで鳴いている声が聞こえる。

ほのかに漂うキンモクセイの香り。

もうすっかり秋だなぁ。

そんなことを思いながら、ぼんやりしていた。するとエレベーターのドアが開く音がして、そこから蓮が出てくるのが見えた。

塾帰りの蓮は制服姿のままで、珍しく今日はメガネをかけている。話さなくなってから二週間。朝も徹底的に時間をずらされていたから、顔を見るのはずいぶん久しぶり。こんなに話さなかったのは、初めてかもしれない。

隣に住んでいるっていうのに、会おうとしなきゃ会えないなんて知らなかった。今まで会えていたのは、蓮が私に合わせてくれていたからだということを思い知った。

蓮がいない私の世界は、なにか大切なピースが欠けてしまったかのように心にぽっかり穴が開いたような感覚。さみしい、っていう言葉が一番しっくりくる。

「なにしてんだよ、こんなところで」

蓮は私に気づいて足を止めた。そして、真顔でそうたずねる。


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