………あの日から1ヶ月が過ぎた。

私は、この1ヶ月…傷病扱いだった。

今日から職場に復帰したが

周りの反応は、驚くほど普通で

まるで何もなかったかの様に…

いつも通りの日常が過ぎていた。

学校側は、新井くんを退学処分にし

全ての責任を彼に負わせ、事の終息に

務めたのだ。

新井くんが退学処分になった事が

学校に広まると

私への風当たりは、一転した。

私が脅されたと信じて

多くの生徒が同情さえしている。

誰も、私を非難する者はいなかった。

新井くんの事を話す生徒さえ

今ではいなくなっていた…。

このまま…

彼はきっと忘れ去られてしまう。

そう考える度に…彼を思い出す度に

胸が押し潰されそうになる。

彼を犠牲にした罪悪感が

波のように押し寄せてきて

私をのみこんでいく…。

私は、彼を守れなかった…。

教師失格だ。

それなのに…

このまま平然と生徒の前に

立ってはいられない…。

本当の事を

打ち明けなければならない…。

だけど…

あの日の新井くんの後ろ姿が…

彼の最後の言葉が…

ずっとずっと私の胸につかえていた。

"…自分は、辞めても構わないけど、

あなただけは、辞めるのはだめだって…

こんなにいい先生はどこにもいないから

絶対…辞めさせないでほしいと

頼まれました。"

もし今、私が辞めてしまったら

彼の想いが無駄になってしまうのでは

ないか…

そしたら私…

何もかも無駄にして

彼の想いまで踏みにじる事になる…。

「…私は、全然…いい先生なんかじゃ…」

そう独り言のように呟くと…

「奥平先生っっ!」