別れ話が好きな人はいない。

でも私は…

彼に伝えなければならない責任がある。

全て、伝えなければならない。

感謝の気持ち…

傷つけてしまった懺悔の気持ち…

そして、もう…愛していないという事。

「……ごめんなさい」

私の声が静かな店内に

煎れたてのコーヒーと一緒に漂う。

それから、長い間…

沈黙が二人を包み込んだ…。

勝平は、静かに黙って私を見つめていた。

私は、バッグから小さな箱を取りだし

テーブルの上に置いた。

「…これ、返します…。」

そう言って、彼の方に箱を移動させる。

その瞬間……

……グイッ…

勝平が私の手を掴んだ。

「……っっ!」

私は、驚いて彼の顔を見上げる。

その時、勝平と目が合う。

彼は、私の顔をじっと見つめたまま…

「……あいつが…

あんなヤツが…いいのか?

本気で、好きなのか?」

今にも泣き出しそうなか細い声だった。

「…はい…」

そう返すのが精一杯だった。

彼の目がゆっくりと下を見る。

「…なんだよ…何でそうなるんだ…

…俺の…何がいけなかったんだよ…

俺は、ずっと…ずっと頑張ってきたのに…。」

そう言うと彼は、私の手を強く握りしめた。

「…痛っ…勝平…離して…」

「…離して…」

もう一度言うと、彼はゆっくりと

手を退けた。

「…傷つけて、ごめんなさい…

ずっと好きでいられなくてごめんなさい。」

勝平の顔を見て、精一杯謝った。

彼も、私の顔をじっと見つめていた。

「……何で、紗和が謝るんだよ…」

その瞬間…彼の頬から涙が流れていた。

「…勝平…」

心配して声をかけようとすると

それを遮るように静かに彼がいい放った。

「……行けよ…もう連絡しないから…

お前なんか…こっちから、願い下げだ。」

ガタッ……

私は、席を立ち…

深々と頭を下げて…店を出る。

そして、一度も振り返らず…

歩き続けた。

ポロポロ…

急に、涙が頬を伝う…

「……え…何で…?」

私は、涙を手で拭いまた、歩き続けた…。

それでも暫く…涙が止まらなかった。