ネオ『青い空、心地よい風……』



『今日は快晴、ピクニック日和だぁーーーーーーーーー!!!!』








音桜の声と共に始まったピクニック。

ここは臨海公園の一角。周りを見渡せば、海が綺麗に光っているのが見える。


エミリア『oh-!It’sワンダフルね~!!』

エミリアも少し興奮気味で音桜と辺りを駆け回る。
ここには2人…かというと、実はもう1人いる。

ユウ『えっと…ホントに俺も来てよかったのか…?』

ネオ『あったりまえよ!優羽も大事な友達なんだから!』

右手で頬を少しかき、不安そうに見つめる。彼も一緒に3人で来ていた。
だが、その少年の着ている服は、白いブラウスに黒いリボン、膝丈ほどある黄色いフレアスカートに身を包み、髪の毛は茶色いロングヘアーを右上にまとめて軽くカールがかかっていた。

見た目はそこら辺にいる女子よりもレベルが高い。
だが、紛れもなく男子。いわゆる
(男の娘)なのだ。








これは、メイド喫茶でバイトするごくごく平凡な女の子と帰国子女、男の娘の、
ごく普通(?)のお話の一部である。











ネオ『きゃーーーー!!!!やっほーーーーーー!!!』

音桜は臨海公園にある長い滑り台を勢い良く滑っていた。その後をエミリアが滑って追いかける。

エミリア『そこの女の子止マリナサーイ!!』

エミリアは父が日本人なだけあって、日本語は良くできるようだ。

優羽は2人が滑り台を滑るところを微笑みながら眺めているだけだった。音桜が優羽を滑り台へ誘うが、「見ているだけで楽しい」と、音桜の誘いを断った。

音桜とエミリアは臨海アスレチックを攻略し、浜辺で綺麗な貝殻を探し集め、優羽の作ったお弁当をお腹いっぱいに食べた。

お昼を過ぎ、夕方に差し掛かる頃、音桜は疲れてしまったからか優羽の膝の上に頭を乗せ、眠ってしまった。

その様子を見ていたエミリアと優羽は、2人で静かに笑い合う。

その後にエミリアが優羽に話しかけた。

エミリア『ユウ、私がネオを紹介してもう4ヶ月経つネ。二人が仲良くなれたようで、私、嬉しいヨ。』

少し間が空いたが、優羽は確実にエミリアに返事をする。

ユウ『…そうだね。だいぶ音桜に近づけた気がするよ。今では俺の数少ない、大事な人だ…。』

そう言った時の顔は、なぜか少し悲しそうだった。

エミリア『ネオに、(大事な友達)って言われて傷ついた?』

ユウ『いや、そうじゃないんだ…音桜に大事な人って言われたのは、すごく、嬉しかった…。けど、俺が欲しかった言葉はそれだけじゃ足りない…。』


エミリアは黙り込んで、しばらくした後、はっと気づいた。







エミリア『ネオのコトが、好き、なんだネ…?』

優羽は顔を少し赤らめ、ゆっくり頷く。

ユウ『音桜は、初めて会った時から俺の容姿をからかうことも、気持ちが悪いと言うこともしなかったんだ。そんなの、お前に続いて2人目だったよ。』

エミリア『まぁ、私はこんなにちっちゃい頃からユウを知ってるからネ!』

そういって座ったままの姿勢で目元の高さほどを手ではかった。

2人は小さい頃からの腐れ縁、幼なじみなのだ。

音桜は2人と学校は違うが高校に上がってすぐ、バイト先であるメイド喫茶でお客さんとしてエミリアと出会い、仲良くなって優羽を紹介された。出会ってからまだ日は浅いが、3人、とても仲が良かったのだ。


優羽は、眠っている音桜の頭を優しく撫で、俯きながら、ゆっくり口を開いた。

ユウ『俺は、素直で、明るくて、みんなを平等に見つめてくれる、可愛くて、無邪気な……………音桜を………』



































『心から、好きになったんだ。』
















エミリアは優羽に優しく微笑みかけた。


エミリア『…そう。良かった。ユウが元気になってくれて。私も、嬉しい。ユウ、最近、元気無かったからネ。…ネオのコト好きになってくれてありがとう、これからも応援してる。』


ユウ『うん、ありがとう。俺もいつか、音桜に言うよ。好きだって。いつになったとしても、必ず。』








ザァァァと、涼しい風が吹いた。
その時、顔を上げると夕日が沈みかかっているのに気づいた。

エミリア『あ!もうこんな時間ダ!急いで帰らなきゃ、ママに怒られるヨ!』


2人は優しく、眠っている音桜を起こす。

ネオ『んんんー…………………へっ!?私、寝てたっ?!』

ユウ『うん、すごく気持ちよさそうに寝てたよ。楽しい夢でも見てた?』


ネオ『へっ!いや、どうかな…?覚えてないや…笑』

帰りの支度をしていたエミリアが「さぁ!帰るヨ~!」と2人を急かした。そして、家までの帰り道、前を笑い合いながら歩く2人を見て、エミリアは小さく呟いた。





















『Good-bye, My first love.(サヨナラ、私の初恋)』











その声は夏の、生暖かい風によって流されてしまったが、その瞬間優羽が振り返って、
『おーい!早くしないと置いてくぞ!』

と、今度は優羽がエミリアを急かした。

その声を聞いて、
エミリア『ハーイ!今行くヨ!』


と笑顔で2人の元へ駆け寄った。