はぁ……あいつ、逃げやがった。




「翼咲~、謝ってこい。今すぐに。でないと今日お前の晩飯は抜きだ」






光輝は、俺に向かって笑顔でそう言った。




「はぁ?なんで俺が……」




「お前はガキか!さっきのやり方はいくらなんでもタチが悪過ぎる!妖斗、すげぇ怯えてただろうが!」




光輝はそう言い、俺の頭を手に持っていた携帯で軽く叩いた。


「だ、だって、光輝が妖斗のこと気に入って」

……ムカつく。


なんで光輝は、こんなにあいつを心配してるんだ。


俺がさっき怒ったのは、妖斗が売色をしてたからじゃない。

光輝が妖斗に奪われるたと思ったからだ。

光輝は異様なほど世話焼きで、何かがある奴には
どんどん声をかける。俺は、それが嫌いだ。

いつか光輝が他人の世話ばかりするようになって、俺をほっとくようになるんじゃないかと思ってしまうから。

光輝は、俺の兄ちゃんなのに。


「……はぁ。たしかに妖斗のことは興味持ってるけど、だからってお前を雑に扱ったりはしないから」

「本当にしないのか?」

「しねぇよ!俺はお前も、妖斗も大事にする!分かったらさっさと行ってこい!」

「……分かった。話してくる。携帯返して」

「……ダメだ。走って謝りに行ったら、返してやる」

「ああもう! わかったよ!」

俺は走って、屋上を出た。