「兄さん、また明日な……」 俺はそう言い、立ち上がった。 帰ってくる声はない。 ある筈もなかった。 だって十年もそうだったのだから。 兄さんが目を覚ましたら、それはきっと世にいう奇跡というものなのだろう。 …………そんなものそう簡単に起きる筈もない。 俺は涙を拭い、病室から出た。