家に帰ると、明かりが点いていて、今日も湊さんは部屋に籠っている様子だ。

「ただいま~……」

返事はないけど、一応帰った報告だけはとておかないとね。
自室に荷物おいて、すぐキッチンへ。
ここに来た直後、湊さんの寝室を私が譲り受け、湊さんは趣味部屋へ移動してくれた。
パソコンとかの配線や、仕事で資料に使う本の移動が面倒だとか。
後、この湊さんの部屋には、掃除だろうと何だろうと入室を禁止された。
『絶対』と念を押されたので、既に中を拝見してしまった事は秘密にしている。

「さてと」

買い置きしてある食材で、手早く夕食の準備をする。
湊さんは自炊をしない人なので、お世話になってる私が自然と料理係になった。
今日は、鶏手羽と大根の煮物。
圧力鍋を用意して、具材と調味料を投入し火にかける。
バイトを始めて、最初の給料で調理器具を購入した。
百均で済むものは、安く揃えたけど、料理係として、圧力鍋だけはシッカリした物を選んだ。
仕事後の夕食調理にとても重宝している。
最初、無いはずの器具達に湊さんは瞠目していたけど、必要経費は自分が出すからと、後々返金されてしまったけどね。
親戚とはいえ、厄介になってる身としては、あれこれ買ってって言い辛いんだよね。
だけど、預かった子に負担を負わせるつもりはないし、必要経費は相談するようにと念を押された。
でも、相談するとだいたい湊さんが購入してくれるので、よ~く熟考してから相談に臨まなくてはならない。
ふいに、静かな室内に、ギターを弾きながら微かな歌声が聞こえてきた。
湊さんが、趣味部屋で何やら口ずさんでいるらしい。
はっきりとは聞こえないとけど、湊さんの声は低くて心地良く響く。
全く知らない曲だけど、最近ずっと歌を歌っているのから、私も覚えつつある。
昔流行った曲とかかな?
こういう時、ジェネレーションギャップを感じる。
手羽の煮物が出来るのに合わせて、違う鍋を取り出して、貝のお味噌汁を作る。
冷蔵庫から、昨夜作っておいた小松菜とじゃこと油揚げの煮びたしを取り出す。
時々お店の手伝いで厨房に立つことがあったから、この年にしては料理ができる方だと自負もあるのよ。