瞳が口パクでなにか伝えてきた。


「みゃ・く」


みゃ、くって脈のこと…?はかったのか…。
熱があること、バレなければいいけど…。

私は後ろから6人目。あと3人入ったら次は私。
喘息があるから瞳ほど病院に慣れてない訳では無いけど、それでもやっぱり嫌なものは嫌。
それにちょっと気持ち的にも体的にも疲れてきているからか喘息の症状が昨日より出ているように思う。
…ちょっとゼーゼーする。


朝から体育館に行ったり経営室に行ったりで移動が多かったし、こういう日はあんまり楽しいことなんてないから、そりゃあさ、当たり前のように疲れちゃうよね。

それにどんどん顔色が悪くなっていく瞳のことを見てたら、瞳大丈夫かなー?でもきっと私も瞳と対して変わらない見た目してるんだろうなー、なんて考えちゃうわけ。

考えちゃうから自覚したくもないのに自覚しちゃってどんどん体も辛くなっていくし。


ちょっとだけ緊張しながらもそんなことを考えていると意外と早く時間ってすぎちゃうみたい。次に人が出てきたら、私が部屋に入る番だ。


…嫌だなぁ、嫌なものは嫌だもん、仕方ないよね。


つくづく私も往生際が悪い。
はぁ、入らなきゃ…

いい加減諦めるんだ、私。頑張れ、私。

指示に従って服装の準備をする。


「腕を出してください。」


そう言われて腕を出した。


「はい、いいですよー。じゃあこのままちょっとだけ順番待っててね。」

「はい。」


よかった、何も追求されなかった。
ほんのちょっとだけ、髪の毛1本分ぐらい緊張がとける。

そして…。


「どうぞー。」


ついたての中から入ってくるよう促される。
はあ、とうとうきたか…。


「33席 水谷晴です、お願いします。」

「はい、服あげてくださいね。」


内心ため息をつきながら胸の下まで服を上げた。


お医者さんの聴診器が滑り込んでくる。
このペタっとする感覚、何回聴診されても嫌だった。さすがに今は我慢するけど昔は泣き叫んで逃げてたなぁ。

ぼーっとそんなことを考えていた。


「はい、いいですよ。じゃあ次は首触りますね。」


あ、これは終わったな。
私の頭の中で終了の鐘が鳴り響く。
だってさ、首触っといて熱あることに気づかない医者ってあんまり居なくない?もしかして私の偏見?


でも多分気づいたね。触った瞬間に、ん?って顔したもん。