白雪姫は差し出された林檎を見て、あらまあとっても美味しそうね、とにっこり笑った後、少し恥ずかしそうに付け足しました。


「ねえおばあさん、わがままを言うけれど、林檎をもう一ついただけないかしら」


おばあさんに変装したお妃さまは、しめしめと思いました。


お妃さまは一応、今は遠乗りをしていることになっています。影武者もいます。


でも、なにぶんお妃さまが白雪姫をいじめているのは有名でしたから、白雪姫が儚くなったとなれば、疑われるかもしれません。


そもそも猟師を放った時点で疑われているのですが、一応お妃さまは白だというのが今の所の王国の見解でした。

これ以上疑われるわけにはいきません。


即効性の毒は足がついたときに危ないので、遅効性の毒で効き目が強いものにしましたが、やっぱりちょっぴり不安です。


たくさん食べてくれた方が、きっと効きやすくなるでしょう。


幸い毒林檎はたくさんあります。


馬鹿な娘だこと、と内心ニヤつきながら、優しそうな顔を作って聞きました。


「もちろん構わないけれど、どうしてだい?」


白雪姫はにこにこ嬉しそうに答えました。


「ありがとう。とっても美味しそうだから、お母さまにも差し上げたいの」