*side 和海

俺は今夢でも見てるんじゃないだろうか。

新入生首席で入学してきた水沢有紀。
名前を聞いた瞬間俺はそいつの顔を見た。
可愛い。誰が見てもそう答えるルックスだ。
長いまつげ。透き通るような肌。桜色の唇。
どれだけの男を虜にしてきたのだろう。


俺は小学五年生のとき、親の仕事の都合で三ヶ月フランスに行ったことがあった。
しかし俺にフランス語が話せるはずがなく、学校が苦痛でしかなかった。
そして、一週間が経ったころ、一人の転校生が来た。
その子は日本人で、フランス語を流暢に話す女の子だった。
それが、水沢有紀。
俺は日本人が来たことが嬉しくて、急いで低学年の教室に向かった。
彼女は俺を見てくったくない笑顔で「よろしく」と。

そして俺はあの三ヶ月で、水沢有紀に恋をした。

そんな奴がこの学校に入学した。
運命を信じてしまいそうになる。
この学校は全国でもトップの進学校だ。
そこの新入生首席。

俺は学校では秘密にしているが、中島家御曹司。
お金持ちは小さい頃から英才教育を受ける宿命だ。
俺は家庭教師に中学生まで散々世話になり、高校レベルの勉強なら難なくこなせる。
だから、俺が生徒会長になったのは少しもすごくない。

「桜の舞うこの美しい校舎で高校生活を迎えられることを心より嬉しく思います。」

きれいな声。
覚えているのか、その手には原稿がない。
一度もつっかかることなく、言い終えた。

生徒会長の言葉。

俺が壇上に立った瞬間、女子の黄色い悲鳴が上がる。

悲鳴が鳴りやんがから俺は話しだした。