突然の嵐がやってきて、乗客500人を乗せた観光船は、まるで木の葉のように海上をさまよった。




空は黒く染まり、激しい雨が降りつける。




操縦不能になった船の上で、泰雅と心美は向き合った。




「船の傾き方が普通じゃないよ。

甲板に波が打ち寄せて、今にもこの船を呑み込みそうだ」




「天気予報は晴れだったのに……。

おかしいよ。

こんな嵐がくるなんて

まさか、この船、転覆しないよね」




「しないと思う。

だけど、もしもこの嵐の中で、海に投げ出されたら……」