「今日から高校生……。友達出来るかなぁ。」

校門の脇にある桜の木が、葉桜へと姿を変え始める4月。

私は高鳴る心臓を落ち着けるように深呼吸をした。

総合学科である天ヶ崎学園には多様な科目がある。個人の才能を尊重し能力を高めることを目的としていて、結構自由な校風の高校で有名。

故に制服はあるものの、髪色やメイク、ピアスはもちろん、カバンや靴も自由で、制服のアレンジまでもが許可されている。

入学初日から同級生と思われる女の子達は派手な装いで、逆に何もしてない私が浮いてるような気さえしてきた。

先が思いやられると1人で呟いては、深呼吸は溜息に変わる。

でも!こんなことで落ち込んでたら出来る友達も出来ない!

自分を慰めて勇気づけ、入学式の会場に急がなければと一歩踏み出そうとした刹那、後から怒気を感じさせる声が降ってきた。

「おい、こんなとこに突っ立ってんじゃねぇぞ。」

「ひっ…!ごめんなさっ…」

いきなりのことに驚き肩が跳ねる。急いで謝罪をしようと後ろを振り向いた瞬間、ネクタイの結び目が眼前にあり、あまりの至近距離に後ろへ跳ね退いてしまった。

「…んだよ。」

私の慌てふためいた様子に更に不機嫌そうな男の子。

「ご、ごめんなさい!近くて、その…」

心臓は先程までの比じゃないくらいバクバクと早鐘を打ち、口から飛び出そうになる。
何とか言葉を紡ごうとすればする程声が出ず、変な子だと思われただろうかと、男の子の様子を伺うように視線を上げた。

「お前、1年だろ。」

先輩だろうか。萎縮してしまうほどの迫力。
でもそれは、怒られたからではなくて、その容姿端麗な見た目にあった。
朝日に透ける綺麗な金色の髪。整った顔立ちに似合ったスラリと伸びた手足。

モデルさんかな…。こんなに綺麗な男の子初めて見た……。

様子を伺うどころか見惚れていた私。
惚けた顔をしていたのか、溜息を吐いた男の子はいきなり私の手首をグイッと引っ張り、学校の敷地へと連れて行く。

「わっ…、あの!」

「道分かんねぇんだろ?初日から遅刻とかダセェから連れてってやる。」

どうやら迷子だと思われたみたいで。
怖いけど案外優しいのかな?と少しだけ安心しながら、私は入学式の会場へ続く道を、男の子と歩いて行った。