ケータイ小説 野いちご

BADEND

ある夏の日

俺にとって、十回目の夏。
夏真っ盛りの茹だるような空気の中、俺はプールに行っていた。
今は帰り道。
まったく……夏休みなのに、何で学校に行かなくちゃいけないんだ。
誰にも呼び止められない内に急いで教室を出てきたから、ゆっくり一人で帰れる。
風が吹いた。濡れた髪が冷たくて、それが恨めしい。服も濡れるし。
「~~♪」
小さい声で歌なんか歌いながら、歩みを進める。
ずり落ちてきた鞄を肩に掛け直す。行きよりも重い鞄に、少し顔を歪めた。
もう一度歌い始めようとして、歌詞を反芻する。
『君が今 ここにいて 愛してるって言えたら どんなにか良かっただろう』
確か、こんな歌詞だった。
そして、ふと思った。
愛するって、何だろ。
俺は、親に愛されてる……と思う。
じゃあ、俺は?
俺は、誰かを愛したこと、ある?
嫌いな人はいない。苦手な人はいる。普通の人もいる。友達のことは、好きで良いだろう。
愛してる人は……いない。
愛するって、何かな。
愛されるって、何かな。
よくわからない。
愛を、感じてみたいなぁ。
そこで思考を止める。
この質問に、答えは見出だせそうになかったから。
家のドアに手をかけ、ゆっくり開く。
「ただいまー」
「おかえりー!」
威勢の良いお母さんの声が出迎えてくれる。蝉の鳴き声が、背後で消えた。
普段通りの、日常。
何となく、退屈だった。

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