ケータイ小説 野いちご

BADEND

一年

自己紹介の時間に、初めて気付いた。
「田城空です。」
数年前、道ですれ違った彼。
栗色の髪。
澄んだ、真っ直ぐな瞳。
間違いなく、彼だ。
同じ高校だったのか。
人の自己紹介、注意して聞いといて良かった。
俺の番になったので、静かに立ち上がる。
「由比ヶ浜です。買い物とか、出掛けるのが好きです。よろしくお願いします」
にこやかに、明るい印象を与えるように。
「由比ヶ浜、下の名前も言おうな?」
「はーい、すいません」
忘れてた、下の名前言うの。
少し恥ずかしくなって、頭を掻く。笑いが起きた。湿っぽさの無い、軽い笑い。
心地のよさを感じた。
湿っぽいのは、暗いのは、柄じゃない。好きじゃない。

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